表題番号:2010B-139 日付:2011/04/07
研究課題地域マネジメントとしての景観計画の立案および視覚的表現手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 佐々木 葉
研究成果概要
H20年度に日本大学、岐阜大学、京都大学と連携して行ってきた岐阜県恵那市における景観計画策定WSの成果を引き継いで、H21年度には、以下のような成果を得た。まず当該地域において作成した地域絵図を計画立案や住民参加の議論の場において用いる意義として、地域認識の多層性、連携のアイディアの誘発といった地域マネジメント上重要な効果が促進されることを確認した。その際、絵図を描く方位とデフォルメする要素が特に重要であることが明らかとなった。この成果は土木学会景観デザイン研究発表会にて発表した。

次に、恵那市明智町の中心部の町並みを対象としたまちづくりルールの議論のために、連続立面図およびファサード構成要素のカタログを視覚的資料として作成した。明智はこれまで日本大正村というコンセプトでまちづくりを進めてきたが、その漠然とした言葉のイメージに影響された地域認識は、必ずしも景観指針とはなり得ず、多様な特色を有した履歴の重層性の存在に着目するという新たな地域認識に基づいたまちづくりおよび景観整備の方向が提示できた。

かねてより街並協定に基づいたまちなみづくりが行われていた岐阜県郡上八幡において、軒下の提灯や行燈といったしつらえの実態と創出経緯の調査を行った結果、住民が操作しやすいこれらに地域の景観認識やまちづくり活動の特質がよく表れていることが確認された。

以上のような具体的な地域でのフィールド調査と地域住民との議論を進める中で、地域のマネジメントとしての景観計画の議論では、使用する視覚的媒体は代表的な場所の写真や地図だけでは不十分であり、広域の骨格構造を反映するとともに地域や場所間の連なりを直感的に把握できる絵図と、極めて身近で使用に伴う身体的感覚をともなった小さな要素の集積という両側面から、視覚的環境把握を可視化する手法が有効であることが確認された。