表題番号:2010B-136 日付:2011/03/14
研究課題エネルギーシステムの統一的解析理論の確立とヒートポンプサイクルの大域的非定常解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 齋藤 潔
研究成果概要
ヒートポンプをはじめとしたエネルギーシステムにおいては,規格で評価された性能と実運転状況下で評価された性能に大きな乖離があることが指摘されている.このため,機器の真の性能向上を実現するためには,常に制御により非定常な状態で運転される機器の非定常実運転性能を詳細に把握し,高効率化を実現することが必要である.このような検討には,非定常シミュレーションが必要不可欠である.そこで,エネルギーシステムの中でも二相流の分岐・混合,チョークが発生するだけでなく,断続運転のような大振幅非線形非定常現象が発生するため解析が困難となるヒートポンプシステムを対象としてその非定常解析を実施する.同時にこのような最難関の非定常解析を通じて,申請者が15年にわたり,研究を実施してきたエネルギーシステムの統一的解析理論を非定常現象への拡張することを目的とする.
これまでに,定常解析については,すでに本解析理論の構築をほぼ終え,多様なエネルギーシステムの解析を可能とし,単に論文発表だけでなく,受託研究を通じて実際にその成果を上げている.しかし,エネルギーシステムの非定常解析についてもすでに複数の研究を受託し,様々な成果を残してきたが,これらはすべて簡易な非定常解析モデルを採用した結果である.このため,ヒートポンプシステム,発電システム等のエネルギーシステムの中でしばしば見られる二相流の分岐・混合現象,高速二相流のチョーク等の現象に対してどのように一般性のある解析を実現するか,また非線形解析の収束性を改善し,どのように計算の安定性を改善するか等クリアーすべき課題が複数残されているのが現状である.
そこで,本研究では,エネルギーシステムの非定常解析を実現する上で十分に検討がなされていない二相流の分岐・混合現象,高速2相流現象が含まれるとともに,断続運転,起動,停止運転等の大振幅非線形非定常現象を含むヒートポンプを対象とし,その大域的非定常解析を可能とする.また,ヒートポンプの高度な非定常解析を通じてエネルギーシステムの統一的理論を非定常解析にまで拡張することが目的となる.
本研究の結果,大振幅非線形非定常問題となるヒートポンプの断続運転,起動・停止運転の合理的解析手法を明確とすることができた.
また,システムの制御特性に大きな影響を及ぼす断続運転の周期,振幅等がシステムの性能にどのような影響を与えるかも詳細に明らかにすることができた.
また,上記ヒートポンプの解析を実現しながら,ヒートポンプだけでなく,多様なエネルギーシステムの合理的解析を実現するための手法をさらに強化することができた.