表題番号:2010B-132 日付:2011/04/07
研究課題ケイ酸ナトリウムを含浸し炭酸ガスで固定化した難燃茅の製造と難燃効果の持続性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 輿石 直幸
研究成果概要
 茅葺き屋根は燃えやすく、延焼防止の観点から市街地では建築が規制されている。そのため市街地で採用するには所要の防火性能を満たす必要がある。一般に木材等の難燃処理に使われている難燃処理剤は水溶性のため風雨に曝される屋根には適さない。一方、本研究で提案する難燃化技術は、ケイ酸ソーダを繊維組織に注入した後、炭酸ガスと反応させることで処理剤を固定化するものである。
 本研究ではこの難燃茅の実用化に向けて、茅材に対する難燃処理効果の安定的向上とその持続性の確保を目的とし、茅材や処理剤の品質、難燃処理条件など、難燃効果に及ぼす影響を実験により明らかにする。
 本年度は、その第1段階として、本研究に関する既往文献の調査と予備的実験を行い下記の結果を得た。
(1)熱重量・示差熱分析(TG/DTA)を行い、ケイ酸ナトリウムの加熱時の性状を確認した。
(2)減圧含浸槽と加圧炭酸化槽を持つ実験用小型難燃処理装置を試作した。
(3)予備実験により、難燃茅の製造方法・条件を暫定的に定め、茅材の内部にケイ酸ナトリウムを注入ができることを確認した。
(4)注入前後の茅の質量変化を求め、難燃剤の注入量を確認した。また、難燃茅の端部および切断した木口面に、アルカリに呈色するフェノールフタレイン液を散布し、処理剤が茅の端部から維管束を通って茅内部へ浸入し、茅全体の維管束および髄部分へ達していることを確認した。
(5)ケイ酸ナトリウムを含浸後に炭酸化処理を行い、同様にフェノールフタレイン液を塗布したところ、茅の端部および端部に近い木口面では炭酸化が進行しているが、茅材中央部までは進行していないことが確認できた。
(6)難燃性の評価にはコーンカロリメータによる試験を行うのが一般的であるが、ここでは、ごく簡易的な接炎による着火試験を行った。その結果、無処理の茅は即着火するのに対し、難燃茅は十秒程度では着火しなかった、着火しても火種から炎を遠ざけると直ちに消火することが確認できた。
 以上より、一定の処理効果を有することが確認できた。