表題番号:2010B-129 日付:2012/10/30
研究課題コラーゲン超分子構造の進化と特異的シャペロンの機能との関わり
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
 Heat-shock protein 47 (HSP47)は、脊椎動物では必須のプロコラーゲン特異的分子シャペロンである。HSP47をコードする遺伝子を両アリルで欠損させたノックアウトマウスは、主要なコラーゲンの型についてその生合成が阻害される。このことによって結合組織が脆弱性をしめし、胎生致死の表現型を示す。一方で、コラーゲン3重らせん構造を有する蛋白質はファミリーを形成しており、その生合成過程でHSP47の介在を必要とするもの、必要としないものがあると考えられている。 2006年に小出らは、HSP47に結合するコラーゲン上のモチーフ配列を同定した。このことでHSP47結合性および非結合性のコラーゲン様タンパク質をクラス分けできるようになった。本研究は、正常マウス胎児由来の繊維芽細胞(MEF)およびhsp47 nullマウスから樹立したMEFを蛋白質フォールディングの「容れ物」として利用し、これら細胞に、様々にエンジニアーしたコラーゲン様蛋白質をトランスフェクションし、その外来蛋白質のフォールディング過程をしらべることで、HSP47の分子シャペロンとしての機能とコラーゲン構造との機能的聯関について知ることを目的とした。
 本研究期間は、実際の研究データを得る実験を実施するための準備実験に費やされた。正常MEFおよびhsp47 null MEF細胞は、かなりヘテロな細胞集団の様相を呈していたため、プラスティックディッシュ表面への接着性を指標として、いくつかのクローンに分離した。また、細胞の形態、増殖性についてもかなりの差異が認められた。今後これらのクローンについて内因性コラーゲンおよび他の接着分子(ラミニンやフィブロネクチン、プロテオグリカン)の発現を調べ、標準的なクローンを選択後に外来コラーゲンおよびコラーゲン関連タンパク質遺伝子のトランスフェクション実験に入る予定である。