表題番号:2010B-128 日付:2013/03/18
研究課題アミノ酸リガーゼの構造機能解析とオリゴペプチド合成システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 木野 邦器
研究成果概要
アミノ酸リガーゼは保護基を持たない遊離のアミノ酸同士を直接縮合することが可能な有用酵素である。我々は、とくにL-アミノ酸リガーゼ(Lal)に着目し、これを用いた効率的かつ汎用的なペプチド合成システムの構築を最終目標として、まずは結晶構造解析により触媒残基や反応機構の詳細を解明することを検討した。
Lalとしては既にBacillus licheniformis由来BL00235が結晶構造の取得に成功しているが、ここで明らかにされた情報からだけでは基質特異性などに関わる残基の特定には至らなかった。そこで、我々は新たにBacillus subtilis由来のRizA, RizBという二種類のLalについて結晶構造解析を行うこととした。RizAにおいては各種クロマトカラムを用いることで組換え酵素を高濃度(10 mg/ml)かつ高純度で精製することに成功した。さらに、蒸気拡散法による結晶化スクリーニングを検討して単結晶を得ることに成功し、X線結晶構造解析によって2.7Åの回折像を得た。分子置換法による位相決定には至らなかったが、結晶系が斜方晶系であることを明らかとすることに成功している。また、RizBに関しては組換え酵素の精製を検討中であり、完了次第結晶化条件のスクリーニングに移行する予定である。
次に、既に結晶構造が解かれたBL00235について、構造情報を利用した酵素の耐熱化を検討した。酵素の耐熱性は工業レベルでの安定利用に不可欠な要素である。まず、B-FITTERと呼ばれるB-value計算プログラムを用いて構造の揺らぎを推定した。そしてBL00235において最もB-valueの高かった148位のAspを19種類のタンパク質構成性アミノ酸に置換した結果、Cysへの置換によって野生型のBL00235よりも変異型BL00235では加熱安定性が3℃ほど向上していた。