表題番号:2010B-126 日付:2013/04/05
研究課題三量体形成に基づく新規強誘電体の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 勝藤 拓郎
研究成果概要
 イオンの三量体形成にともなって、三量体に垂直方向に(常に同方向に)他のイオンを「押し出す」ことによって、その方向へ自発分極が発生する物質群が知られている。こうした物質を研究し、さらに同様なメカニズムによって強誘電体となる新物質を開発することを目指した。

三量体「強誘電体」SrV6O11の単結晶作製の試み
 上記のメカニズムによりc軸方向に分極が発生する(しかし金属のため自発分極は発生しない)ことが知られているSrV6O11の単結晶作製を試みている。分解溶融のため単純なフローティングゾーン法では単結晶はできない。また適当なフラックスもないために、traveling solvent floating zone法もうまくいかない。しかし、フローティングゾーン法を繰り返すうちに、包晶のような形で結晶が成長する可能性を見いだした。現在のところ大きな結晶は出来ていないが、粉末x線で00lピークのみが強く出るなど、平板状の微結晶がたくさんできていることが示唆されている。今後条件をさらに詰めて、大きな単結晶を作製することを目指す。

スピネル型V酸化物におけるBサイト1:3秩序型の物質開発
 スピネル型V酸化物AV2O4において、V3+のうちの1/4を他の元素Bで置換した物質、AV1.5B0.5O4を作製し、そのVとBが1:3で秩序した系の作製を試みた。こうした物質においてVはカゴメ格子を形成し、このときV三量体が形成すると、カゴメ格子と垂直方向に自発分極が発生することが期待される。A=Li+, B=Nb5+など、様々な組み合わせで合成を試みているが、現在のところ単相試料の作製には成功していない。今後さらに条件を変えて、単相試料の作製を目指す。