表題番号:2010B-125 日付:2011/11/02
研究課題ノンリファレンス型画質推定とそのデータベース参照型画像処理への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 甲藤 二郎
研究成果概要
本研究では、圧縮画像の客観画質評価手法として、原画像を必要とせずに圧縮ストリームの符号化情報をもとに画質推定を行うNR(Non-Reference)型画質推定に着目し、以下の検討を行った。具体的な画質評価尺度としては、古くから広く用いられているPSNR (Peak-to-peak SNR)と、近年PSNRよりも主観評価に近い客観尺度として注目されているSSIM (Structural Similarity) を対象にしている。
(1) NR型PSNR推定方式のH.264/AVC圧縮動画像への適用
(2) NR型PSNR推定方式のJPEG圧縮画像への適用
(3) NR型SSIM推定方式の定式化とJPEG圧縮画像への適用
(1)では、既存のMPEG-2圧縮を対象とするNR型PSNR推定方式を、H.264/AVC圧縮に拡張し、実画像を用いた評価実験を行った。その結果、他の競合方式に比べて推定のばらつきはあるものの、NR型PSNR推定をH.264/AVCに適用するにあたっての、ある程度の推定精度の見通しを得た。
(2)では、(3)の実験の前段階として、NR型PSNR推定方式のJPEG圧縮への適用を試みた。方式自体はMPEG-2方式の簡略化であり、実画像を用いた評価実験としても、良好な推定結果を得た。
(3)では、従来にはない新規提案として、NR型SSIM推定の推定アルゴリズムの定式化と、実際のJPEG画像を用いた評価実験を行った。その結果として、正確な統計量を必要とするSSIMの推定アルゴリズムと、画像の局所性に依存して値が変動するSSIMの実測値の間にはトレードオフの関係(推定領域が大き過ぎると局所性が反映されず、小さ過ぎると統計量がばらつく問題)があることを明らかにした。
今後の課題としては、Flickrのような大規模画像データベースを対象にNR型PSNR推定を適用することと、NR型SSIM推定の精度改善を試みる。