表題番号:2010B-121 日付:2011/04/09
研究課題精度保証付き数値計算学の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大石 進一
研究成果概要
精度保証付き数値計算学の展開:
本研究では,非線形系に対する精度保証付き数値計算を展開するための基礎を構築し,その上で非線形偏微分方程式の計算機援用証明等の応用を展開した.

1)大石・高安
Newton-Kantorovichの定理を用いた計算機援用証明手法を確立するため,これまで不可能であった楕円型非線形偏微分方程式の解の存在と誤差の範囲内での一意性を証明した.計算で得られる近似解にある程度の滑らかさを仮定すると,従来よりもはるかに効果的な残差評価を適用でき,既存の過大評価を回避することができる.これによりEmden方程式の解などの非線形性が大きな解にも提案手法の適用範囲が拡大し,目標に向けて一歩前進した.

2)劉・大石
楕円型偏微分方程式を非凸な領域で考える場合,偏微分作用素は特異性により非常に扱いが難しい.従来法の多くは凸領域を仮定することが多いが,我々は混合型有限要素とHypercircle
equationを用いて,任意多角形領域上でラプラス作用素の固有値評価を精度保証付きで求めるユニバーサルな手法を世界で初めて開発した.また提案手法を用いたWebアプリケーションを開発し,ユーザーがオンライン上でグラフィカルなシミュレーションを行えるようになっている.

3)山中・大石
精度保証付き数値積分では,全ての計算誤差を考慮し「ユーザーが要求する精度まで数学的に正しい結果を返すアルゴリズム」を提案した.この手法は計算に生じる公式誤差の上限を多重階微分値を利用したり,複素円盤領域上で事前に計算できる.一般的な近似解だけを求める数値積分アルゴリズムは許容誤差を満たすように再帰的にアルゴリズムが設計されていることが多いが,本手法を用いると許容誤差を満たす分点数が事前誤差評価によりあらかじめ計算できる.これを用いて,従来の近似計算アルゴリズムと同等程度(時に高速)な超高速かつ高信頼な精度保証付きアルゴリズムを開発した.