表題番号:2010B-120 日付:2011/04/14
研究課題先進医療の長期効果の予測を目指した究極の血液循環シミュレータの提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 梅津 光生
(連携研究者) 高等研究所 准教授 岩崎清隆
(連携研究者) 理工学術院 助手 八木高伸
研究成果概要
東洋紡績社製補助人工心臓の弁にはSORIN-Carbocast弁(以下,SC弁)が使用されていたがSC弁の生産中止に伴いMedtronic-Hall弁(以下,MH弁)への移行が行われた.ここでは,シミュレータにより弁変更に伴う人工心臓の水力学・溶血特性を調査した.臨床使用のカニューレを模擬したWindkessel回路を用いて,SC弁及びMH弁の性能比較を行った.収縮期時間比のみ20~60%の範囲で変化させ,平均拍出流量と弁近傍の水撃値を計測した.水力学試験の結果に基づき,a)2種の弁において最大拍出流量が得られる駆動条件,b)収縮時間比を下げて2種の弁の流量が同一になる駆動条件で溶血量の比較を行った.豚新鮮血を使用し開始5分後及び1時間ごとの血漿遊離ヘモグロビン濃度,溶血量を示す指標として6時間後のN.I.H (Normalized Index of Hemolysis) を計測した.最大拍出時にMH弁の方が流量で12%,水撃値で14%高値を示し全体的にもMH弁の方が高値を示した.しかし,2種の弁において同一流量が得られる収縮時間比での水撃値はMH弁がSC弁よりも約20%低減した.a)の条件ではMH弁がSC弁よりも72%高値を示した.しかしb)の条件でのMH弁のN.I.H値は0.03g/100Lで,最大拍出時と比べ約33%の低減をすることができた.また,SC弁との比較では約16%高い結果となった.MH弁はSC弁と比較して拍出性能が高いため収縮時間比を下げて駆動してもSC弁使用時の拍出性能を維持でき,かつ水撃の低減を通じて溶血を低く抑えることができる.臨床においてSC弁よりも低い収縮時間比での駆動が適切であると結論づけられた.