表題番号:2010B-111 日付:2011/04/05
研究課題多点同時蛍光相関分析法による細胞内遊離タンパク質動態の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 井上 貴文
研究成果概要
通常の二光子励起顕微鏡で使われるガルバノミラーによるXY両軸のスキャンではなく、直交する2つのAODデバイスによるXYスキャンを用いることにより、従来型では不可能であったランダムスキャンを可能とし、非常に低侵襲で高速な(数10 kHz以上)観測を可能とする新型二光子励起顕微鏡を開発した。AODによるスキャン方式では2次元空間上の複数の点から測定できるので、神経細胞の多数のスパインおよび樹状突起中の情報を収集できる。またランダムスキャン方式により、必要最小限のスポットにのみ励起光を照射するので、従来型のXYスキャンあるいはラインスキャンの場合に大きな問題であった細胞のダメージが大きく軽減される。また、記録部は光電子増倍管を光子計数モードで動作させるので熱ノイズをキャンセルすることができ、低ノイズでの記録が期待される。本年度は蛍光相関分光法(FCS)をリアルタイムで適用するソフトウェアを実装し、細胞質でのタンパク分子蛍光分子の挙動を測定することによりシグナル分子の挙動を精密に測定することを試みた。その結果、蛍光ビーズを用いて自己相関を計測することができた。小分子蛍光色素では自己相関がまだうまくとれないので光学系の調整を進めている。また、高速ランダムスキャンを生かして多点膜電位計測を試みている。本年度は電位依存性色素の効率的取り込み法の確立を目指した。最終的に遺伝子銃を用いた電位依存性色素注入法が有効であることが明らかになった。