表題番号:2010B-107 日付:2011/04/19
研究課題蒸発プロセスの超省エネルギー化を可能にする水蒸気圧縮技術の研究開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 天野 嘉春
(連携研究者) 理工学研究所 客員研究員 日野俊之
研究成果概要
本研究は,湿潤バイオマスのエネルギー資源化あるいは,汚染土壌の土壌改良前処理プロセスなどに適用可能な,ヒートポンプ式蒸発脱水システムの高性能化と,そのプロセス評価手法を明らかにすることを目的としている.また,エネルギーシステム一般の最適化手法を駆使して,プロセスシステムの提案を行うためのフレームワークを提示することを最終目標としている.

■システムの高性能化:ヒートポンプ式蒸発脱水システムの主要機器である圧縮機について,熱力学的に詳細な検討を加え,圧縮仕事における損失低減の可能性を調査した.特に,水噴霧による圧縮行程の温度上昇を低減することによる効果を説明する熱力学モデルを提示した.これにより,凝縮後のドレン水を回収することで,5%程度の圧縮仕事の低減が図れることを理論的に明らかにした.また,具体的な水噴霧における液滴直径などを試算したところ,現在市場に存在する噴霧機構を利用することで,必要な仕様を満足することを確認した.2011年度には,引き続き,これを検証するための実験装置を構築し,理論を検証したい.

■プロセス評価:バイオマスのエネルギー資源化に係わる研究が活発に行われているが,従来処理システムでは,バイオマスのうち多くを占める湿潤バイオマスの運搬,乾燥において,問題を抱えている.このため,エネルギー回収については,比較的水分率の低いバイオマスに焦点を当てた処理システムの検討がなされている.湿潤バイオマスからのエネルギー回収のための前処理として,亜臨界水処理による有機物の加水分解反応により水溶性物質に変換した後,高速高消化率メタン発酵プロセスなどが提案されているが,依然として乾燥過程でのエネルギー多消費は改善されていない.筆者等の提案しているヒートポンプ式蒸発脱水システムを組み込むことによって,このような各種前処理,エネルギー変換処理プロセスのエネルギー回収性が改善されるが,本研究室で開発した,具体的な処理システム形態のエネルギー利得を評価するプロセス評価モデルのアップデートを継続している.

■エネルギーシステムの最適化:エネルギー変換プロセスは様々なプロセス要素の接続によって実現されている.詳細なプラントレベルの実証データを逐次収集し,エネルギー利得が可能なシステム構成の探索を継続している.