表題番号:2010B-089 日付:2014/04/11
研究課題BSCによるホスピタリティ産業におけるマネジメントの問題点の体系化と解決策の提示
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 長谷川 惠一
研究成果概要
 平成23年度科学研究費補助金への応募の準備段階として、科研費で申請する研究テーマにおいて、中心的なフレームワークとして利用するバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard: BSC)の理論上の論点を整理することと、管理会計の側面からホスピタリティ産業に必要な会計システムを検討することに集中した。
 まず、2010年時点までのBSCの理論について体系的な整理を行った。BSCの提唱者であるKaplan and Nortonの所論について、嚆矢となる1992年の論文から2008年の最新の著書までを対象としたBSCの理論について、これを包括的に体系づけた論述がないことに鑑み、BSCの基礎理論として整理した。具体的には、BSCの理論の変遷、BSC導入前の前提条件、スコアカードおよび戦略マップを含めたBSCの基本構造、導入・運用にあたっての注意点、といった論点について考察し整理した。
 また、BSCの実践的な応用において、議論が分かれる論点、あるいは、これまでの研究においてあまり論じられていない論点についても検討した。具体的には、BSCの基本概念、組織とBSCの問題、戦略的実施項目と戦略予算との関係について論じた。BSCの基本概念としては、BSCにおける「バランス」の意味、スコアカードと戦略マップとの関係、原著者のKaplan and Nortonのいう"strategic"の意味について検討した。組織とBSCの問題については、BSCを適用する組織単位、BSCの下方展開、同一組織内で複数のBSCを利用する場合の業績評価などを考察した。戦略的実施項目と戦略予算との関係については、従来の管理会計の理論で論じられている予算管理の体系を、戦略に関連する予算の管理を行うことができるように調整する必要性について論じた。
 そして、ホスピタリティ産業界における会計情報の有用性について検討した。具体的には、ホテルにおける財務会計情報と管理会計情報の必要性について論じ、そのためには、ニューヨーク市ホテル協会(The Hotel Association of New York City)が1926年に公刊して以来、欧米の宿泊施設において利用されている、宿泊施設の統一会計報告様式(Uniform System of Accounts for Lodging Industry: USALI)を導入する必要性を論じた。USALIは、ホテル経営において、財務会計についても、管理会計についても、有用な情報をもたらす会計システムであるが、目下のところ日本の宿泊施設においてはその導入実績は少なく、今後はその導入が期待されると結論づけた。