表題番号:2010B-088 日付:2011/05/24
研究課題組織ルーティンのダイナミズムについての国際比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 大月 博司
研究成果概要
 本研究は,従来の研究動向を踏まえた上で,組織の効率性と創造性を同時に実現する組織のあり方について,組織ルーティンのダイナミックス性に着目し,組織の無駄を排除する効率性と組織のポジティブ面を生かす創造性(イノベーション)を同時に実現する組織モデルの構築を探究することを目的したものである。
 本年は,研究計画に沿って,組織ルーティンにおける効率性と創造性の側面の相互関係というダイナミックな観点から,そのメカニズム解明を意図し,仮説的なモデルを構築した上で,予備的な実態調査としてメーカー及び病院を中心に国内企業と海外企業の比較研究を行った。仮説的なモデルとしては,組織の効率性はルーティンの安定,創造性はルーティンの変化という次元に落とし込んで,両者の関係性を二次元モデルとして想定した。すなわち,組織ルーティンの安定性が高まれば高まるほど,ルーティンの変化の必要性が高まるという仮説モデルである。その結果,組織の業態にかかわらず,また企業と病院の違いにもかかわらず組織ルーティンの普遍的なメカニズム,すなわち,安定と変化のダイナミズムがみられることの確認ができた。そして,組織ルーティンのダイナミック性に関わる要因を抽出し,構造化論やアクター・ネットワーク論を援用しながら,国内外の企業組織,病院組織を対象に,仮説実証型の事例研究を行う可能性が確認できた。
 今後はさらに,研究対象とする業種をメーカー以外にも拡大しつつ国際比較研究の展開を志向し,とりわけ我が国企業組織と比較するという観点から,特に米国,英国,中国の企業組織を取り上げて定量研究および定性研究を展開し,効率性と創造性という組織のパラドックス面を解消する,組織ルーティンのダイナミクスなメカニズムの理論モデルの構築とその実証を進めていく。