表題番号:2010B-084 日付:2011/04/12
研究課題20世紀半ば以降の経済学者の知的交流と経済学の国際化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 池尾 愛子
研究成果概要
 20世紀以降における経済学の国際化にはいくつかの原因や局面がある。今回のプロジェクトでは、経済学者の知的交流と統計学の利用について調査を進めた。
 第1に、アメリカ人経済学者マーティン・ブロンフェンブレナーが、占領期に日本に数ヶ月以上滞在して日本人経済学者たちと交流した唯一の外国人経済学者であったことに注目した。彼の公刊論文と未公刊自伝をたどることにより、アメリカ側が、石橋蔵相追放、ドッジ・ライン実施、シャウプ使節団による税制改革勧告、貿易再建までを、日本経済復興のための必要諸条件として理解していたことを明らかにした。まず、日本語論文の公刊を予定している。
 第2に、北米やヨーロッパの経済学史研究においては、1980年代から統計学の利用や計量経済学の発展が注目されていた。背景には、コンピュータやソフトウェアの低廉化と性能向上、データベースの品質の向上がある。計量経済学史の国際比較プロジェクトに参加し、日本について、杉本栄一、市村真一、畠中道雄、雨宮健の貢献を中心にまとめあげ、日本の計量経済学研究の特徴が、マクロ計量経済モデルの熱心な作成にあることを強調した。赤池弘次や佐和隆光の貢献については、今後の課題として残っている。
 第3に、1997年東アジア通貨危機と2008年世界金融危機の比較を試みた論文を、中国でのシンポジウムで発表した。1997年危機について、中国と、韓国・日本では理解の仕方が異なっていることがわかってきた。今後も、戦後金融史研究を続けていく予定である。