表題番号:2010B-078 日付:2011/04/10
研究課題魚歯化石のネオジム同位体比による後期白亜紀の北太平洋における海洋循環系変革の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 助手 守屋 和佳
研究成果概要
 本研究は,後期白亜紀(10~8千万年前)の地層から産出する魚歯化石のネオジム同位体組成を解析し,白亜紀の北太平洋の海洋循環を明らかにすることを最終目的としている.本助成では,上記の研究の基礎情報となる,北海道北西部に分布する白亜系,蝦夷層群の地質調査,および各層準から産出する化石の産出頻度の調査を行った.
 調査は,北海道雨竜郡幌加内町,および北海道苫前郡古丹別町で行った.両地域は三頭山,小平蘂岳,羽幌山,白地畑山,およびピッシリ山と続く尾根によって境されているが,後期白亜紀の地層が広く分布する地域である.幌加内町には主に10~9千万年前の地層が分布し,古丹別町には9~8千万年前の地層が分布している.
 これらの地域に分布する蝦夷層群は下位より日陰の沢層,佐久層,および羽幌川層の3層に区分される.日陰の沢層,および佐久層は主に,海底扇状地や海底谷の堆積物と想定され,浅海の大陸棚よりもやや深い地点であったと類推される.一方,古丹別地域に分布する羽幌川層は大陸棚上,および海底三角州の堆積物であると考えられる.従って,両地域に分布する蝦夷層群はおおむね上方に浅海化する層序をもつ.
 これらの地層のうち,泥岩ないし,砂質泥岩部から岩石試料を約1Kg採取し,これらを実験室で泥化,洗浄することで,堆積物中に保存された魚歯化石を含む(微)化石を抽出した.さらに,抽出した化石の堆積岩試料200gあたりの総個体数を計測し,これを層準ごとに比較することで,各層準における生物量の概要を解析した.その結果,日陰の沢層,および羽幌川層では200g中に含まれる化石が1000個体を超える層準がしばしば認められるのに対し,佐久層では1000個体を超えることはまれであった.佐久層中には,白亜紀の中でも大きな絶滅イベントとして知られているCenomanian/Turonian境界が存在することから,今後はこれらの生物量の概算と当時の古環境の変遷についての研究を展開する.