表題番号:2010B-070 日付:2011/04/01
研究課題米国における日本語蔵書の成立、変化、及び利用形態についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 和田 敦彦
研究成果概要
 本研究でねらいとしているのは、米国における日本語蔵書の形成を明らかにし、それら日本についての文献や情報の利用環境を歴史的に調査することである。それによって海外における日本情報の流れや、それをめぐる国際間の政治、経済関係をも明らかにすることが可能となる。また、より大きな視点からは、書物の流通や受容がもたらす影響をとらえることも可能となっていく。
 これまでは海外の日本語蔵書に関する資料収集と分析、整理を行ってきたが、本年度は予算面を配慮して、国内での調査、収集に重点をあて、これまでの成果をできるだけ論文や著書の形で公開することにつとめた。
 具体的には、海外の日本語蔵書自体の調査よりも、それら日本の書物を、海外に送り出した国内の図書館や民間の機関、企業を重点的に取材、調査することによって、多くの資料を発見し、公開につとめた。特に国際文化会館、国際交流基金、東京大学大学院アメリカ太平洋地域研究センター、等の協力を得て、同機関の所蔵、関係資料の収集、分析、保存と公開につとめた。それらをもとに、関連する研究会と連携し会誌『リテラシー史研究』を発行し、成果の一部を公開した。また、これら資料を生かして、著書として『越境する書物』の刊行準備を進め、2011年度中の刊行が可能となった。
 これらの成果はまた、単に日米間の書籍、情報流通の問題に限定されるものではなく、たとえば国内での書物の流通、販売システムの形成を歴史的にとらえる手法としても有効である。そうした研究方法や資料活用の可能性を広げるために、長野県でこれまで収集してきた近代の出版資料を積極的に意味づけ、公開する作業を進めた。この成果も、関係する研究者とともに著書として刊行することが可能となった。