表題番号:2010B-066 日付:2011/04/06
研究課題光合成の短期的な光応答メカニズムとその適応的意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 園池 公毅
研究成果概要
本年度は、特定課題の研究期間の短さを考慮し、植物の光環境応答メカニズムのうち、植物がおかれた光環境と光合成の関係に集中して研究を進めた。具体的には、果実のように、内部の光環境が外部とはことなる植物の部位における光合成を中心に研究を行なった。本実験ではクロロフィル蛍光を測定する事によって、果実の部位ごとの光合成活性の差を調べた。ソラマメの豆とさやをパルス変調測定でクロロフィル蛍光測定を行なうと、豆は光化学系Ⅱの最大量子収率の指標であるFv/Fmの値が低くなっていた。この原因を探るために3つの実験を行った。まず1つめは、QAからQBの電子伝達が阻害で、測定パルスによるFOの上昇が起こり、見せかけのFv/Fmが小さくなると考え、LIGHT INTENSITYを変化させて豆とさやそれぞれを測定した。しかし、QAからQBの電子伝達に異常はみられず、豆のFv/Fmが小さい原因ではなかった。次に、豆とさやの電荷分離の反応速度の違いを観察するためにSTflashを用いて測定を行なった。しかし、豆とさやにQAからQBへの電子伝達速度の差異が見られず、これもFv/Fmが小さい原因ではなかった。しかし、系Ⅱのアンテナサイズが同じ事、STflash照射後のQAはさやの方が還元されたままである事、QB以降の電子の流れには違いがある事がわかった。3つめに、系Ⅰが何かしらの事情で増加し、Foが上昇してFv/Fmが小さくなったと考えられる。系Ⅰと系Ⅱの蛍光の違いを調べるために、液体窒素を使用して77Kでの蛍光を測定した。豆とさやで系Ⅰの蛍光の大きさに差は見られなかった。しかし、系Ⅰの波長のピークが豆は短波長側にずれており、豆は系Ⅰのアンテナに異常がある事が推測される。これら3つの実験からQAの還元状態に因るものと判明した。