表題番号:2010B-059 日付:2011/04/12
研究課題高次遺伝情報の解読:エキソンのDNAだけがもつ特異的柔軟性の生物学的意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 本研究は、エキソンを構成するDNAの柔軟性がプロモーター領域を構成するDNAの柔軟性よりも高いことを発見したことに端を発している。2009年度は、出芽酵母のCYC1プロモーター(チトクロームcアイソフォーム1遺伝子のプロモーター)を用いた実験的アプローチを行い、その結果から次の仮説を導いた。「エキソン以外の領域にはヌクレオソームのポジショニング情報が含まれている(遺伝子の機能制御のため)。一方、エキソンにはこのような情報は不必要でヌクレオソームが出来さえすれば良い(単にゲノムDNAの凝縮のため)」。もしこの仮説が正しいのであれば、プロモーター領域と第1エキソンの間に存在する5’非翻訳領域も第1エキソンよりも硬いDNAで構成されていることになる。2010年度は、この点について調べた。具体的には、任意の真核生物遺伝子の第1エキソンの上・下流それぞれ50 bpの領域を解析することだけを条件にして、約50名の解析者に自由な解析(解析サンプル数も各自自由)をさせ、二つの領域の間にDNAの柔軟性における差異が有るか否かを検討するという手法をとった。したがって、解析対象は生物種や遺伝子に関して多種多様であった。しかし、得られた結果は、どれも下流の50 bpが上流の50 bpよりも若干柔軟であるというものであった。なお、この解析ではゲノムデータベースを検索する際に転写開始点の情報を無視したので、一部のサンプルにはプロモーターの一部の領域が含まれていた可能性がある。この点を考慮に入れても、今回の解析で5’非翻訳領域は第1エキソンの始めの領域よりも若干硬いDNAでできていることが明らかになった。