表題番号:2010B-051 日付:2011/04/11
研究課題ヨーロッパ「共生型社会」の創出と政治文化システムの形成に関する比較史研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 森原 隆
研究成果概要
本研究は、ヨーロッパ社会の中・近世および近・現代の各時代・地域・領域において展開される、エリート
等の支配層・指導層と市民等の一般庶民・民衆層の「共生」さらには民族、言語、宗教的差異を超えた
「共生」の活動や実態を、政治文化や社会システム変容との関係で比較史的考察しようとするものである。
研究分担者が、それぞれの研究分担課題について、史料文献の収集と研究史の把握に努め、研究会での報告
や議論をとおして研究課題の検討を行なった。まず2010年7月に研究総会と合評会を開催した。合評会は、
前の共同研究書である森原隆編『ヨーロッパ・エリート支配と政治文化』(成文堂)350頁について、とく
に17本の研究論文について、各執筆者・書評者による再検討と論議が活発になされた。研究総会については、
今後の共同研究のテーマである「共生」の問題に関する問題提起と会計報告等がなされた。11月にスペイン
史関連の主催シンポジウムがなされ、とくに現代スペインの社会福祉の問題についての詳細な研究報告と討
議がなされた。12月にはシンポジウム「世界システムとオスマン帝国 ―共生と相克のダイナミズム―」
早稲田大学西洋史研究会第57回大会 / 共催:ヨーロッパ文明史研究所)が開催され、河野淳氏の近著
『ハプスブルクとオスマン帝国』(講談社メチエ、2010年)を題材に、世界システム論と共生論などについ
て、非常に熱気あふれた報告と論議が展開された。個別研究としては、森原は、研究全体を総括し、近世フ
ランス社会における共生現象の分析を行ない、とくにジャーナリズム形成に見られる政治文化とエリート社
会の関係を考察した。前田は、古代オリエント・メソポタミアの家産制のもつ階層構造の分析を、井内は、
中世ポーランドの騎士層と都市の関係から共生現象を捉え、大内は、第2帝政期ドイツにおける共生現象を、
村井は、近代北欧とくにデンマークにおける共生現象を、竹本は、現代アメリカ合衆国の黒人問題に関する
共生現象に関する研究を継続してそれぞれ深めた。今後は継続してヨーロッパ社会における「共生」の問題
を政治文化を中心に検討し、共同研究書の刊行を目指してすすめてゆく予定である。