表題番号:2010B-035 日付:2011/04/11
研究課題ロボット技術を応用した精神疾患モデル動物作成・評価手法の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 木村 裕
(連携研究者) 文学学術院 助手 岡林誠士
(連携研究者) 理工学術院 教授 柴田重信
(連携研究者) 理工学術院 教授 高西淳夫
(連携研究者) 理工学術院 講師(任期付) 石井裕之
研究成果概要

幼年期における過度のストレスは,その後の精神疾患発症リスクに多大な影響を及ぼす.このような知見にもとづき,本研究では小型移動ロボットとラットを用いて精神疾患モデル動物作成技術を開発することを目的としている.今回,われわれは幼若期ラットに対してロボットによる攻撃を暴露し,そのラットが成熟した後に,再びロボットによる攻撃を暴露することによって精神疾患モデル動物を作成することを試みた.
 実験ではF344雄ラットを用いた.ラットには異なる条件で,幼若期にストレスを暴露した.このときのストレスの種類としては,ロボットによる攻撃と電撃グリッドによる電撃の2種類を用いた.そしてそれらのラットが成熟した後,再び異なる条件でストレスを暴露した.このときのストレスの種類としては,相互作用を伴うロボットによる攻撃とロボットによる一方的な攻撃の2種類を用いた.成熟後のストレス暴露の前後で,オープンフィールドテスト,強制遊泳テスト,ロボット追跡テストなどの行動テストでラットの活動性の評価を行ったところ,相互作用を伴うロボットによる攻撃の方が,より強い活動抑制作用を持つことが確認された.
 以上の結果から,幼若期にロボットによる攻撃を暴露されたラットは,成熟後に再びそれを暴露された際に,それを経験していないラットと比較して活動性が低くなることがわかった.この原因は,幼若期のロボットによる攻撃が,ラットに心的外傷を形成したためと考えられる.また,相互作用を伴うロボットによる攻撃の方が,ストレッサーとしてより強い作用を持つことが確認された.これらの要素を組み合わせることで,新たな精神疾患モデル動物の作成が可能であることが示唆された.