表題番号:2010B-012 日付:2011/04/08
研究課題行政経営原価計算基準の開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 小林 麻理
(連携研究者) 関西大学 教授 柴 健次
(連携研究者) 慶応義塾大学 教授 会田 一雄
(連携研究者) 札幌大学 准教授 宇野 二朗
(連携研究者) 広島市立大学 准教授 城多 努
(連携研究者) 実践女子大学 准教授 石川 恵子
(連携研究者) 佐賀大学 教授 中西 一
研究成果概要
 本研究は財政が逼迫する中で、地方自治体が効率的かつ効果的な行政経営を行うために必要とされる原価情報算定の基準を開発することを目的とする。まず宇城市、東京都荒川区、静岡県浜松市等と質疑を行い、わが国の地方自治体におけるコスト情報活用の実態と課題について把握を行った。その結果、行政評価における発生主義に基づくフルコスト情報の活用が不十分であり、財務諸表の作成にも関わらず、原価情報を活用するシステム設計が欠如していることが明らかとなった。その上で「フランス予算・公会計改革」について集中的な検討を行った。これにより、次のことを明らかにした。すなわち、フランスでは、プログラム予算への取り組みである「予算法律に関する組織法律」(Loi Organique relative aux Lois de Finances: LOLF)に基づき、プログラム別の原価計算と業績指標の設定によるプログラム評価が実施されており、米国の政府業績成果法(Government Performance Results Act: GPRA)の取り組みを志向する業績予算のアプローチがとられていること、また公的管理会計の柱として、原価計算、特に全部原価計算、業績指標であるタブロー・ド・ボール、責任センター、マネジメントコントローラーの職能導入があり、アンジェ市は1985年から原価計算システムを実施していることである。
 さらに原価計算スキームとその運用上の課題を識別するため、発生主義会計の導入を行うと同時に、原価計算基準を策定して、地方政府にその実施を試みている韓国に実態調査を行った。韓国においては、発生主義及び複式簿記の全面導入が、地方自治体においては2007年に、中央政府においては2009年に行われている。韓国における財務諸表は、①財政状態表(B/S)、②財政運営表、③純資産変動表であり、これらに成果報告書を付加する構成となっている。財政運営表は、正味プログラムコストを算定する構成となっており、地方自治体においては2011年に策定された『原価計算準則』により事業単位ごとに原価を集計し、成果評価を行うことが目指されているが、忠清南道に行ったヒアリングでは、実務的に原価計算対象の設定およびフルコストの算定に課題が存在していることが明らかとなった。
 行政経営原価計算基準の開発研究という最終成果を産出するための中間報告として小林麻理は2つの研究報告を行って、外部からのインプットを得た。最終成果としての行政経営原価計算の開発研究に向けて、研究論文の発表を2011年以降逐次行う予定である。