表題番号:2010A-842 日付:2011/04/27
研究課題確率的資源配分問題の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 助教 笠島 洋一
研究成果概要
経済学においては、財は無限に分割することができると仮定されることが多い。しかし現実には、分割することができない、あるいは分割することが不適切な財は数多くある。このような財を「非分割財」と呼ぶが、本研究では、このような「非分割財」を人々にどのように配分するべきか、あるいは、どのように配分することで公平性を保つことができるのかという問題を分析した。例えば、学生寮の部屋(非分割財)を学生(人々)にどのように配分するべきかという問題が例として挙げられる。このような問題を数学的に表現し、公理論的に分析をした。配分においては、事前的な公平性を保つために、確率的な配分方法を考察した。分析の中心として、自分の選好に関して嘘をつくことが得にならないことを要求する「耐戦略性」という公理と、パレート最適な配分となっていることを要求する「効率性」の公理を考え、それらの公理の含意(implication)を考察した。分析においては、各人が1つの財を受け取るケースと、各人が複数の財を受け取るケースに分けた。その結果、1つの財を受け取るケースでは、たとえ問題のドメインをかなり小さくしても、「耐戦略性」と「効率性」は両立することが不可能であることが示された。これらの公理は、問題のドメインを小さくすればするほど両立することが容易になる。従って、これらが小さいドメインにおいても両立できないという結果は、一般のドメインにおいて両立できないという結果よりも強い。また、複数の財を受け取るケースでは、たとえ「耐戦略性」よりも弱い公理を考えても、その公理は、「効率性」やその他の弱い公理(人々の名前が配分の結果に影響を与えないことを要求する「匿名性」という公理や、非分割財の名前が配分の結果に影響を与えないことを要求する「中立性」という公理)とは両立できないことが示された。これらの公理は、各人が1つの財を受け取るケースでは両立できるので、この結果から、複数の財を受け取るケースにおいては、公平性の達成はさらに困難になることが示唆される。