表題番号:2010A-835 日付:2011/03/03
研究課題施設介護における職員と入居者間のコミュニケーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 専任講師 バックハウス ペート
研究成果概要
本プロジェクトは介護施設の現場におけるコミュニケーションを研究する目的で、介護職員と入居者の間の言語行動を考察したものである。使用データは2008年埼玉県東部にある介護老人保健施設の実態調査で収集されたほぼ40時間の録音会話である。

研究期間内では、会話データの文字化を終わらせた上、その詳しい分析を進めた。分析は量的及び質的側面を含む。前者としては、入居者の呼ばれ方を量的に分析した結果として,70%で最も頻繁な呼ばれ方は「名字+さん」であることが分かった。「ファーストネーム+さん」で呼ばれる入居者が17%を占め、残り13%は場合によって両方の呼称が可能である。入居者の呼ばれ方を決める要素としては、年齢と性別が挙げられ、特にファーストネームで呼びやすいのは、高年齢の女性である。なお「おばあちゃん」「おじいちゃん」などのような,いわゆる親族名称の虚構的用法は発生しなかった。

質的分析としては、会話モードの切り替えについて考察した。先行研究にも指摘された通り、介護現場において根本的に2つの会話モードが分けられる。1つ目では、会話者の施設的役割が中心となり、「介護者」と「被介護者」であることが職員と入居者の関係を定義している。2つ目は、会話者の施設的役割よりも、個人同士としての関係に焦点が移され、それによって非施設的なコンテクストが構築されようとしている。本会話データにも、両方の役割関係が確認できており、介護中に会話者は、どのような役割でどのような会話モードを選ぶか、詳細に分析した。