表題番号:2010A-833 日付:2011/04/07
研究課題無限次元タイヒミュラー空間の不変部分空間の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 松崎 克彦
研究成果概要
無限次元タイヒミュラー空間に作用する写像類群の部分群とその不変部分空間の研究により,円周の同相写像群がメビウス群と共役になるための条件を与える問題に対して一定の成果をみた.普遍タイヒミュラー空間の写像類群は,円周の擬対称写像群と同一視できる.この場合,漸近的タイヒミュラー空間上のファイバーを不変にする部分群が対称写像群である.対称写像群の作用の固定点(不動点)を求める立場から上記の共役問題を考察した.Markovic による基本結果により,写像類群の部分群がタイヒミュラー空間に固定点をもつための必要十分条件は,軌道が有界であることがわかっている.よって有界軌道をもつ部分群に制限し,それが不変にする部分空間内に固定点をもつための条件を定式化した.以前の自身の結果で,対称写像群の部分群一般に対しては固定点の存在は保証されないことはわかっていた.本研究では,対称写像を境界値としてもつ単位円板の擬等角写像の歪曲係数に可積分条件を与え,それをみたす部分群を考えれば,対応する不変部分空間(具体的には可積分な正則2次微分の空間)に固定点をみつけられることに注目した.擬等角写像の歪曲係数の可積分条件は,対称写像自身の滑らかさの条件への対応をもつことが知られている.この関係を精査することにより,たとえば 1+1/2 階より大きい連続微分をもつ円周の微分同相写像群に対して,それがメビウス群と共役となるための条件を記述することが可能になった.この方法をさらに進めることにより,1階より大きな連続微分をもつ微分同相写像群の共役問題に関する予想の解決に向けて,前進が期待できる.今後の課題として継続して研究する予定である.