表題番号:2010A-815 日付:2011/03/31
研究課題岡山藩池田家における恩赦の基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 准教授 谷口 眞子
研究成果概要
 岡山藩における近世の恩赦を研究するために,池田家文庫マイクロフィルムの史料調査を行った結果、恩赦の関連史料が数百点にわたって残されていることが判明した。まず、岡山藩内の寺院で実施された歴代将軍の死去や回忌法要の恩赦、並びに藩主やその妻子などの「法事の赦」については、法事ごとに史料が作成され、そこに恩赦の記事がみえる。マイクロフィルム史料目録「藩侯1」に収録されている膨大な量の「吉凶仏事」史料のほとんどは、法事の際に作成されたこの種の覚書・留帳であった。また毎年の「留帳」にも恩赦について記載があることがわかった。さらに国元と江戸との往復書簡にも、藩主が参勤交代で江戸在府の場合、恩赦適用者決定の判断を仰ぐために、恩赦に言及したものがみいだせる。
 これらのことから、司法史料として有名な「刑罰書抜」には、実際に恩赦で赦免された者の一部しか収録されていないことが明らかになった。岡山藩は外様大名であるにもかかわらず、17世紀後半から幕末に至るまで将軍の回忌法要を領内寺院で行い、そのたびごとに恩赦を実施していたのである。
 そこで岡山藩で実施された歴代将軍の回忌法要のうち、元禄13年に行われた大猷院(三代将軍家光)50回忌と厳有院(四代将軍家綱)21回忌をとりあげ、恩赦適用者はどのような過程を経て決定されたのか、赦免はどこで申し渡されたのか、赦免にはどのような種類があるのかなどを分析した。その結果、法事の最終日に、法事が営まれる寺院で直接赦免が申し渡される籠舎の者、減刑される者、すでに刑罰が執行されている者のうち赦免される者がおり、さらに法事が終了したあと、寺院から提出された赦免嘆願者リストを藩が吟味し、あとで恩赦を言い渡される者がいたことがわかった。
 口頭報告を行う計画だった近世法史研究会は大地震のため開催中止となったが、研究成果は平成23年9月刊行予定の早稲田大学史学会編『史観』第157冊に論文の形で発表する。