表題番号:2010A-813 日付:2011/04/11
研究課題歌舞伎義太夫(竹本)床本の基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 児玉 竜一
研究成果概要
 本研究では、従来ほとんど未着手である歌舞伎義太夫(竹本)研究のための基礎的作業を行った。
 まず伊藤寿和日本女子大学教授から寄託をうけた竹本床本の、書誌調査をおこない、55冊の床本、2冊の版本、1冊の寄せ本を確認した。
 このうち、『歌舞妓浄瑠理書抜』と題する寄せ本は、11作品の竹本詞章を書き抜いたもので、従来こうした資料の存在は知られていなかった。表紙に「第拾壱号」とあるので、旧蔵者・浅野喜市が最低十数冊このような書き抜きを所持していたと考えられる、歌舞伎役者が旅興行などに用いる携行用の書き抜きを所持している例は確認していたが、竹本演奏者も同様の書き抜きを用意していたことが、初めて明らかとなった。
 コレクションの中核を占める床本は、55冊中、44冊までが竹本栄太夫旧蔵のもので、大正7年から昭和26年までに渡る期間の上方歌舞伎の竹本床本であることが明らかとなった。これは現存する竹本床本のなかでは、古い年代に属する。
 他に本研究でおこなった竹本床本の所在調査により、松竹大谷図書館に竹本扇太夫、豊竹寿太夫、豊竹和佐太夫、竹本雛太夫らの旧蔵本を確認、他に未整理品として他に未整理品として、竹本米太夫・竹本鏡太夫・豊沢瑩緑旧蔵本などがあることも知り得た。意外に膨大なコレクションが所蔵され、のべ作品数で555件を数えることができる。1人で同作品を数冊所持している場合もあり、数千冊に及ぶ冊数が見込まれることを確認した。
 これらの成果を口頭発表をおこない、竹本研究という分野の存在に対する認識を促した。さらに、竹本実演者の協力を得て、さらに残されている資料の調査、曲節の読解による演出研究の方法の模索などを、継続してゆく予定である。