表題番号:2010A-505 日付:2013/11/28
研究課題ガス・液体アルゴンを用いたタイムプロジェクションチェンバーの基礎開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 寄田 浩平
研究成果概要
究極の素粒子像、宇宙創成への問いに対し、高エネルギー加速器実験と相補的かつ重要な役割を果たす研究課題として1.暗黒物質の探索、2.陽子崩壊の観測、3.次世代ニュートリノ物理が挙げられる。本研究課題はこの3つの研究対象に対して、包括的なアプローチを可能とする「気体・液体アルゴン2相型のTPC(Time Projection Chamber)・光検出器」を構築し、安定かつ高効率で信号を得ることによって、新しい現象の探索感度を向上させることを目指している。まず、研究は10リットル容器を用いたシステムを学内に構築し、低温運転、2相型検出器の確立、純アルゴン中でのガス相での増幅、128nmという真空紫外光のシンチレーション光の検出基礎的な開発を行い、初期段階としてその全てを完遂することに成功した。特に2相型での宇宙線観測を確立、また純アルゴン中でGEM、wireを用いて増幅率1000近くを達成した。ただし、純アルゴン中では放電が早いため、高電圧が印加しにくいため、さらなる高増幅率の達成が難しい。それを容器内にコッククロフトウォルトン型の回路を挿入し、フィードスルーでの帯電電圧を下げることで解決できることがわかった。一方、将来的に陽子崩壊の物理感度の評価に欠かせないKaonとPionの識別能力の検証するため、250リットル容器(液体一相型)をJ-PARCでのビームラインに設置し、中型容器での運転、低温管理、高純度化に加え、多チャンネル読出しによる信号解析を行った。課題として浮き彫りになったのは、3次元読出し(2次元平面+ドリフト方向)の重要性である。これはテクニカルには、容器内での電場の非一様性による信号のバラつきを評価するために非常といえ、またdE/dXでの粒子識別における行程長の精密測定に影響する。これは次の開発の大きな課題であり、今年度の2回目の実験提案の基礎となるものとなった。これまでに得た成果は、論文と学会発表、学生の卒業・修士論文にすべて纏めた。