表題番号:2010A-107 日付:2011/02/15
研究課題在米メキシコ人移民の"旅的居住観"と送り出し社会の開発モデルに関する学際的取組
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 助手 牧野 冬生
研究成果概要
「在米メキシコ移民の“旅的居住観”と送り出し社会の開発モデルに関する学際的取組」については、踏査調査を伴う建築学的サーベイと人類学的な視点から資料収集・分析を行い以下のような成果を得た。本年度の前半においては、主に資料収集と文献調査を行い、現在のメキシコ移民の特徴的現象のひとつである観光的一時帰省に着目することで、一時帰省移民が送り出し社会へ与える影響を精査した。その上で、9月上旬にメキシコのハリスコ州ハロストティトラン市においてフィールドワークを実施した。現地調査によって、ハロストティトラン市のセントロと呼ばれる市中心部において特徴的であったスペイン植民地時代のパティオを有する伝統的建築群が、移民の海外送金による新たな住宅によって変容している現状を把握することが出来た。伝統的建築群は、1980年代後半から急速増えてきたカリフォルニア様式(アメリカンドリーム型)とでも言うべきアメリカ中産階級の住宅意匠を模した住居にとって変わられてきたが、現在は行政による伝統的住宅群の保護への流れを受けて、新旧の建物が混在した特徴的な様相を呈している。移民と住宅の関係については、2010年10月に開かれたラテンアメリカ研究学会(LASA2010)にて企画セッションを立ち上げ、牧野はチェアパーソンとしてハロストティトラン市における移民と住宅の関係について発表した。アメリカンドリーム型から伝統的かつ地域的(RUSTICO)な建築様式への回帰は、移民者から地元へ海外送金による住宅建設の視点から分析するだけでは不十分であり、住民が移民者に仕掛けた戦略的流行という視点や、メキシコ全土で急速に高まってきたメキシカンアイデンティティの影響と見ることも可能であり、地元住民と移民の間の歴史的な背景をさらに探る必要がある点が今後の研究課題として残された。本課題に関する研究成果を踏まえて、2011年度科研費へ応募している。