表題番号:2010A-097 日付:2011/04/08
研究課題スキル動作のエラー検出能力に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 正木 宏明
研究成果概要
 エラー関連陰性電位(error-related negativity: ERN)は,パフォーマンスの脳内モニタリング過程を捉えるツールとして近年注目されてきた.ERN研究は急速に発展してきたものの,運動スキル課題を用いた実験は少ない.そこで本研究では,連続ボタン押しによる相対タイミング学習課題を採用し,練習スケジュールを操作した.これによって動作スキル獲得の神経メカニズムをパフォーマンスモニタリングの観点から捉えることを目的とした.相対的タイミングスキルには,練習スケジュールの効果が頑健に現れることは従来の研究で明らかにされており,運動学習課題として最適であると考えられた.
 実験課題は2つのボタンを目標動作時間通りに交互に4回連続タッピングすることだった.またボタン反応間の目標動作時間を変えることで以下の3課題を設定した.課題A:300 ms ->225 ms ->150 ms,課題B:300 ms ->200 ms ->400 ms,課題C:250 ms ->500 ms ->375 ms.
 また,練習様式の異なるブロック群とランダム群(各9名)を比較した.ブロック群は同一課題を繰り返し遂行したが,ランダム群は試行ごとに異なる課題を遂行した.両群とも第一日目に,21試行×9ブロックの練習試行(試行毎に結果のフィードバックを行った)と直後テストを遂行した.第2日目には保持テストのみを行った.
 その結果,ランダム練習群のほうが学習は促進し,従来報告されてきた文脈干渉効果を確認した.動作スキル獲得中のERNを記録した結果,学習の促進したランダム練習群のほうがブロック練習群よりも,ボタン押し時の陰性電位は大きく,パフォーマンスモニタリングが練習スケジュールによって影響を受けることが示された.本研究の成果は,動作スキル獲得の神経メカニズムを明らかにするうえで有益であると考えられる.