表題番号:2010A-093 日付:2012/10/31
研究課題高齢者の筋機能向上トレーニングを促す環境要因と知識・行動との関連
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
介護予防を進めていく上で、筋機能向上トレーニングは重要な役割を果たす。ただし、筋力トレーニングの効果が立証されても、それが筋力トレーニングの普及につながる訳ではない。近年の健康づくりに関わる研究分野では、研究の知見を如何に国民へ伝えるのか?という問題意識が急速に高まっている。そこで本研究では、高齢者の筋機能向上トレーニングを促進する手がかりを得ることを目指し、情報環境および物理的環境が、高齢者の筋機能向上トレーニングに対する知識や行動と関連するかを検証した。情報環境に関しては、高齢者1244名を対象に郵送法による質問紙調査を行い、様々なチャネル(新聞、ラジオ、家族、自治体の広報など、14項目)での筋力トレーニング情報との接触状況と、筋力トレーニングの健康効果の認知と筋力トレーニングに対する関心との関連性を検証した。人口統計学的要因の影響を調整したロジスティック回帰分析を行った結果、筋力トレーニングに対する関心には、医療従事者、友人・知人、TV、本、インターネットが情報源であることが有意に関連していた。また、筋力トレーニングの健康効果の認知には、家族および本が情報源であることが有意に関連していた。これらの結果から、本やインターネットなど情報探索者が利用するチャネルに加えて、対人チャネルやTVから筋力トレーニング情報を提供することが、筋力トレーニングの健康効果の認知を促したり、筋力トレーニングに対する関心を高めたりする上で有効である可能性が示された。次に、物理的環境に関して、高齢者293名を対象としたweb調査のデータベースを解析した。ロジスティック回帰分析の結果、筋力トレーニング施設へのアクセスが良いことや、筋力トレーニング用具を保有していること、および近所で運動実施者を多く見かけることが、筋力トレーニング実施と有意に関連していた。この結果から、物理的環境をターゲットとした介入戦略(例えば、施設を整備しその存在をアピールする、用具の配布、身近な物を活用したトレーニング法を広める)が、高齢者の筋力トレーニング実施を促す上で有効である可能性が示された。