表題番号:2010A-088 日付:2011/04/07
研究課題移動観測法による局地温度の成立要因の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 太田 俊二
研究成果概要
筒型の放射よけを自作して自転車にとりつけ、移動とともに温度・湿度を連続的に観測する方法を確立した。この手法以外に、移動観測ルート内の代表的な三カ所に定点用の観測ポイントも設定した。これら二つの方法の組み合わせにより、所沢市郊外域(所沢キャンパス周辺、所沢市三ヶ島地区)の局地温度の特徴を定量化し、さらにそれがどのように成り立っているのかに迫った。そのうち、所沢キャンパス南門地点と北門地点は直線距離で600mほどしか離れておらず、いずれも駐車場脇の森林内という点で観測条件はほぼ同じであるにも関わらず、この二点の温度の変化は非常に特徴的であることがわかった。夏季においては、北門のほうが2度近く南門より温度が高く、反対に冬季においては南門のほうが北門よりも3度も温度が高かった。このように局地温度は年間を通じて一定ではなく、季節変化をすることがわかった。また、所沢キャンパスから直線距離で1.1km西南に位置する所沢AMeDASポイントの同時刻のデータと比較したところ、冬季においては北門の温度と完全に同調していたが、夏季においてはキャンパス内のデータ数が少ないため明確な特徴を見いだすことができなかった。本研究計画は単年度で終了するが、今回の助成によって得られた機材を用いて、現在春から夏に向けての温度・湿度観測を継続し、夏季の特徴を確実に得たいと考えている。今年度の予備的な結果のみであっても、局地温度が季節変化することはほぼ間違いないと言えるので、局地温度を形成する主要因は複数あるのか、季節変化をするものかのいずれであることが考えられる。生じている規模が極端に小さいことから、接地逆転層の形成だけでは十分に説明することはできない。また、観測点のすぐ横を流れる小川の流量などに季節的な変化はなく、また50m程度の標高差による冷気流の形成も理論的には考えにくいことから、別の仮説を立てることを急いでいる。