表題番号:2010A-076 日付:2011/04/10
研究課題宇宙環境で利用可能なAPD読み出しシステムの基礎開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鳥居 祥二
研究成果概要
本研究では、高エネルギー宇宙線の観測による宇宙における高エネルギー現象の解明を目的とした、国際宇宙ステーションにおけるCALETプロジェクトの要素技術開発として、全吸収型カロリメータの読み出しシステムの開発を行った。CALETでは、1GeVから1000TeVに及ぶ6ケタのエネルギー領域の観測のため、PWOと呼ばれる結晶シンチレータをAPD/PDで4系統の異なるゲインにわけて読みだす技術開発を行っている。そのうち、特にAPD/PDのシグナルを電荷増幅するために必要なハイブリッドIC(HIC)の基礎開発をおこなった。
 この開発では、まず4ケタのダイナミックレンジと低ノイズを実現するHICを開発・製作し、試験回路によって地上性能を確かめた。そして、宇宙用回路部品としての品質保証や安全基準をクリア―することを確認するため、熱サイクル試験や放射線試験を実施して、宇宙環境での利用が可能な搭載品として性能実証を行っている。さらに、実際にCERNにおけるビーム実験により、PWOにおける電子シャワーの発光量をAPD/PDで測定して、シミュレーション計算との比較により、CALETのTASCとして、高エネルギー宇宙線の観測に所期の性能が実現されていることを確認している。
 これらの成果は、全体報告のなかで概略を報告しているが、2011年度に開催される国際会議で詳しく報告し、査読付き論文に投稿を行う予定で成果をまとめている。