表題番号:2010A-060 日付:2011/02/24
研究課題ガラス溶融炉における熱化学再生燃焼の適用研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 中垣 隆雄
研究成果概要
CO2排出削減が急務となっている高温炉熱利用型産業における1000℃域を超える廃熱の利用方法の一つとして,熱化学再生(TCR)が注目されている.TCRは,火炉用燃料を水蒸気改質反応させ,得られた水素リッチガスを燃料として投入する方法であり,10%前後の燃料の削減とそれに伴うCO2削減が期待できる.本研究では,天然ガス吹きの窯業やガラス溶融炉などの1300℃以上の高温廃熱利用を前提に,平衡論ではほぼ完全に進行するはずであるメタンの水蒸気改質反応が,無触媒・低S/Cの条件下で,気相中でどの程度の速度で進行するかを実験的に検証し,TCRシステムの基礎データを得ることを目的とする.
実験装置は,窒素で約80%に希釈したメタンと約300℃の過熱蒸気をS/C=2の条件で混合する原料供給系,800℃まで昇温する予熱器および外径12mm,長さ1000mmのSUS310S管に純度99.9%,直径2mmのアルミナボールを充填した反応管で構成した.反応器内部に挿入したK型熱電対で,反応温度が900℃から1150℃まで所望の温度になるように電気炉を制御し,メタンの流量を50,200,400および800ml/minとすることで滞留時間を0.02~0.2秒の範囲でパラメータとした改質試験を行った.反応系の定常状態を確認してから,生成ガスの凝縮成分を分離し,ガスクロマトグラフィによって分析した.その結果,生成ガス中には未反応のCH4のほかCO,CO2およびH2のみが検出され,Cベースの物質収支もこれらのみで釣り合ったことからC2や炭素の析出も無視できる量であること,CH4転化率は温度とともに非線形的に増加し,滞留時間の最も長い流量50ml/minにおいて1150℃の場合35%,LHV増加率して7.2%となることを確認した.
一方,ChemkinにGRI-Mechを適用し,1150℃においてS/C=2.0の条件で0次元気相反応による数値計算で経過時間ごとの成分を予測したところ,水素生成は見られるものの,実験結果よりも格段に遅い結果となったことから,管内壁あるいは充填物の表面反応が寄与している可能性があることも分かった.本実験結果によるメタンの消滅反応速度は,r[mol/s]=99.5・exp(-21930/T)・PCH4^0.15・PH2O^0.09と整理された.