表題番号:2010A-055 日付:2013/10/29
研究課題強力な抗腫瘍性化合物、ゼロフィルシンIの不斉全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
本研究においては、ent-kauranoid 類の一般的合成法を確立し、それをもとに強力な抗腫瘍性化合物xerophilsin Iの世界初不斉全合成を目指している。分子内 Diels-Alder(IMDA)反応により、多くの不斉中心を一挙に構築する計画を立て、まず、ブテノリドをジエノフィル部分とするIMDA反応の基質合成を検討した。当初、Pd触媒による分子内一酸化炭素挿入反応によりブテノリド部分の構築を検討したが、基質が不安定で低収率であった。種々検討の結果、銀触媒によるアレンカルボン酸のラクトン化反応によりブテノリド部分を構築でき、目的とする基質を合成できた。しかし、そのIMDA反応は生成物を与えたものの低収率であり副生成物も多く、反応条件最適化による収率向上は望めなかった。そこで、分子間[4+2]型反応による骨格構築を検討した。ent-kauranoid 類の骨格を分子間[4+2]型反応により構築するためには、-位に4級炭素を持つ立体障害の大きいエノンがジエノフィルとなるので、反応を加速するため、電子求引性基をエノンのα-位に導入した。ent-kauranoid 類の効率的不斉合成のためには、この分子間[4+2]型反応の不斉触媒化が有効であるが、これまで成功例はなかった。我々はイミドをエノンのα-位に持つ基質の[4+2]型反応を検討したところ、-位に4級炭素を持つ基質も好収率で生成物を与え、不斉触媒を用いると80%ee以上の生成物を得た。また、所望のイミドを合成する新手法も開発できた。今後はイミドをα-位に持つエノンの触媒的不斉[4+2]型反応の最適化とそれを活用するent-kauranoid類の一般的合成法を確立し、それをもとにxerophilsin Iの不斉全合成を目指す予定である。