表題番号:2010A-047 日付:2011/04/02
研究課題アレルギー発症モデルマウスにおける体内時計の役割解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
アレルギー疾患に体内時計がどのように関わっているかを明らかにする研究を行った。アレルギー症状としての花粉症や喘息は早朝から午前中にかけて症状が悪化する事が知られている。また、アレルギー性の痒みは夜間の寝る前に起こりやすいことも知られている。そこで、マウスを用いて、種々のアレルギー反応に体内時計がどのように関わっているかを、ヒスタミンによる皮膚透過性反応を指標にアレルギー反応について調べた。皮膚透過性反応にはリズムが見られ、夜間の初めは反応が小さく、夜間の後半から昼間にかけては強いことが分かった。次に時計遺伝子であるPer2遺伝子の変異マウスを用いて同様の実験を行ったところ、いずれの時間帯でも、透過性反応が強かった。血中のコーチコステロンのリズムならびに含量を測定したところ、ワイルドマウスでは、夜間の始めに血中のコーチコステロンの濃度が増大する一方、変異マウスはそのような増大が見られず、1日中同じ値であった。一方、IgE受容体感受性や発現量を調べた結果、両者に差は見られなかった。また、ヒスタミン分泌細胞である肥満細胞を培養し、両者のリズム性のヒスタミン分泌能を調べたところ、両者に差は見られなかった。以上の結果から、痒みのリズムを引き起こす原因は副腎皮質ホルモン分泌リズムに依存し、体内時計の異常は、コーチコステロンリズムの医異常を引き起こし、痒みを増大させる可能性が指摘された。
 卵白アルブミン(OVA)の感作により、鼻炎モデルや喘息モデルが作られている。そこで、感作時間が異なることで、アレルギー反応が増大するか否かについて調べた。1日を4等分して、朝、昼、夕、夜にOVAを注射し、血中のIgE量を測定した。その結果、夕方感作が一番IgEの増大が小さいことが分かった。先に述べたようにコーチコステロンの可能性を検証するために、副腎摘出やデキサメサゾン投与下のIgEを測定すると、仮説通り、感作にも副腎皮質を介したリズムがあることが分かった。