表題番号:2010A-044 日付:2012/10/30
研究課題網膜色素上皮由来因子(PEDF)による血管新生阻害の分子機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
 本研究は、強い血管新生阻害作用を有する内因性蛋白質である色素上皮由来因子(Pigment epithelium-derived factor, PEDF)の作用メカニズムの本質とその構造的基盤、およびPEDFが示す血管阻害活性の調節(あるいは破綻)の機構について明らかにすることを目的として行った。すでに、我々はコラーゲンとPEDFとの結合が血管阻害活性の発現に重要であることを報告している。
1)まず、PEDF単独での結晶化条件の探索を行った。第一選択として大腸菌で発現させたリコンビナントPEDFを使用したが、溶解性が悪くX線結晶構造解析に適当な良質の結晶は得られなかった。そこでペプチドとの共結晶化を進めることとした。PEDFは3重らせん型コラーゲン様ペプチドと結合するので、結晶化のスクリーニングを行う室温で3重らせんを形成する最短の長さのコラーゲン様ペプチドをデザイン・合成した。今後、このペプチドとPEDFとの共結晶化を行う。
2)PEDFとヘパリン/ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、オーバーラップした特異性をもってコラーゲンに結合することをすでに明らかにしている。今回コラーゲン様ペプチドの構造活性相関研究から、PEDFおよびヘパリンが結合するコラーゲンの配列モチーフを決定した。この情報は、PEDFのみに結合する、あるいはヘパリンのみに結合するコラーゲン様ペプチドを分子デザインによってつくり分けられる可能性を示唆するものであり、細胞をもちいた今後の研究に有効なツールとして用いることができると期待できる。
3)PEDFとコラーゲンの相互作用がコラーゲンの分子修飾によって影響をうけるかどうかを、in vitroで糖化修飾したコラーゲンを用いて検討した。その結果、糖化コラーゲンではPEDFとの結合が減弱していた。この結果は、糖尿病による血管増生の新しいメカニズムを示唆しうるものである。