表題番号:2010A-043 日付:2011/04/05
研究課題廃棄物処理フロー各ステージからのレアメタル回収方法の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
(連携研究者) 理工学術院 助手 北瀬(村上)晶子
研究成果概要
(研究目的)地球上の金属資源は有限である.とくにレアメタルは,希少資源であるとともに,自動車・IT製品の製造に不可欠な素材である.その一方で、これらのメタルは,①地殻中の存在量が少量であること,②精錬コストが高いこと,③単体として取り出すことが難しいこと,等の特徴から,一度製品化した廃棄物から分離・回収することは重要な位置を占める.
(研究方法)現在では携帯電話など特定の商品からのレアメタルリサイクルは活発に行われている.しかし,これらは未だ単発的で,廃棄物の総合的な処理フローに則ったものとはいえない.本研究では,既存小型家電製品に焦点をあてて,それらの製品の各パーツに使われているレアメタルの種類と量について,既存資料および分析実験からデータベース化を試みる.次に,それらの製品の中間処理プロセスを明らかにして,そのプロセスからでる残渣に含まれるレアメタル含有量を測定する.即ち,レアメタル回収における現在の廃棄物処理フローが適切であるか否かの検証である.一方,わが国では1990年以降に廃棄物のリサイクルに関する法制化が進んだ.しかし,それ以前の廃棄物の大部分は,直接あるいは焼却施設を経由して最終処分場へと運搬され埋め立てられた.このような背景から,1990年以前に埋め立てられた最終処分場の埋立層には多種の重金属類が混入しているものと推定される.しかし,埋立層の浸出水には重金属類はほとんど検出されない.即ち,これらの物質は埋立層の中に封じ込められているものと推測される.レアメタルもこれら重金属と類似の挙動を示すものと推定される.そこで,最終処分場の埋立物を対象として,そのなかに含まれるレアメタルの種類と量およびそれらの鉱物的な賦存形態の解明を試み,廃棄物埋立層から回収有望なレアメタルを特定する.
(研究結果)本研究は遂行途上である.これまで得た結果の概略を記す.
①数ヶ所の最終処分場埋立層の掘削コアを分析した結果,Pb・Zn・Cu・CdおよびCr・Ni・Vの組合せが,それぞれ類似した深度別濃度トレンドを示した.SO3,Clの含有率は,深度が増加するに従い上昇する傾向を有する.また、SO3,Clの含有率が高いコアにおいて重金属濃度も高い.そのほかのレアメタルについては現在分析中である.
②小型家電に含有されるレアメタルの種類と量について,文献調査および手選別・機械粉砕している中間処理施設からでる各種残渣を分析することにより検討した.その結果,相対的にNiの含有量が顕著であった.そのほか,BaやMnも多く含まれている.また,基板には,Ni,Ba等が多かった.