表題番号:2010A-041 日付:2011/04/04
研究課題細胞内サイクリン依存性キナーゼ5活性のモニタリング法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大島 登志男
研究成果概要
サイクリン依存性キナーゼ5(Cyclin-dependent kinase 5, Cdk5)は、脳形成過程での役割に加え、様々な脳機能への関与が知れらているが、その活性上昇が神経変性過程で報告されている。しかし、活性上昇が神経細胞死の原因であるとする報告があるものの、結果にすぎないとする反論があり、結論が出ていない。神経細胞中のCdk5活性を生きたままモニタリング出来れば、細胞死に先立って活性上昇があるのか、細胞死後に活性が上がるのかを検討できる。本研究では、Fluorescence Resonant Energy Transfer (FRET)を用いた生細胞でのCdk5活性のモニタリング法を開発して、神経細胞内での活性測定を試みることを目的とした。
 FRETによるCdk5活性のモニタリング法は、1. Cdk5活性と活性型Cdk5の局在-Cdk5及びp35キメラタンパク質のヘテロ二量体形成による解析、2. Cdk5の基質タンパク質にCdk5のリン酸化依存的に起きるタンパク質相互作用を利用したものを用いた。1のCdk5/p35ヘテロ二量体形成に伴うFRETを培養神経細胞で観察した。グルタミン酸添加により一過性の活性上昇が知られているが、FRETの上昇が観察され、Cdk5/p35のヘテロ二量体形成の増加が推定された。2の基質リン酸化依存的なタンパク室結合を、FRETシグナルとして培養COS細胞を用いた系で観察することに成功した。これらの結果を踏まえて今後神経細胞にCdk5活性を上昇させる刺激を加えた時、細胞死を誘導した時などのFRETの変化を検討する予定である。本研究によるCdk5活性のFRET法を用いたモニタリング系をさらに発展させることで、神経細胞死におけるCdk5活性の意義、即ち原因であるか結果であるかを明らかにすることが可能であると考えた。