表題番号:2010A-037 日付:2011/04/18
研究課題非定常カオス理論と非線形地殻力学モデルによる自身の統計則と確率的予測理論の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 相澤 洋二
(連携研究者) 理工学術院 助手 新海 創也
研究成果概要
 地震の発生間隔の統計的性質を明らかにすることは、地震活動の定量化のみならず、次の地震の確率的な予測へと波及する重要な問題である。我々は、気象庁の地震データおよび断層のスティックスリップ運動をモデル化した2次元のバネ-ブロックモデルから作った地震データを用いて、地震の発生間隔の確率分布関数が、Weibull分布とlog-Weibull分布の重ね合わせで記述することができ、マグニチュードの閾値を大きくすると、分布関数におけるWeibull成分が徐々に大きくなり、最終的にはWeibull分布に移行する(Weibull – log Weibull転移)ことを見出し、この性質が地殻の特徴によらず成立する普遍的な性質であることを報告した。
 本研究では、上述した転移現象が他のプレート境界の地域でも抽出できるかを明らかにするため、南カリフォルニア(SCEDC; Southern California Earthquake Data Center)および台湾(TCWB; Taiwan Central Weather Bureau)の地震データを用いて同様の解析を実施した。

本研究の主要な結果は、
1)南カリフォルニア、台湾においても地震の発生間隔におけるWeibull – log Weibull転移の性質を抽出することができた。
2)分布関数がWeibull分布へと移行するときのマグニチュードm_c^**は、対象地域によって変化するものの、各領域の最大マグニチュードm_maxで規格化すると、m_c^**/m_max =0.54 ±0.06という関係式を見出した。
3)m_c^**は、プレートの速度とおおむね比例関係になっている。

 本研究を基礎にして、将来の地震活動や次の大地震の確率的な予測など地震分野への貢献に加え、地震という自然現象を通して、いまだその詳細がわかっていないWeibull – log Weibull転移のメカニズムを明らかにするという物理数学的な展開が可能となった点も非常に有意義な成果の一つである。