表題番号:2010A-015 日付:2011/04/11
研究課題17世紀フランスのT・ルノドーと「公共の福利」理念・活動
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 森原 隆
研究成果概要
本研究の目的は、17世紀前期のフランスの文人ジャーナリストである、テオフラスト・ルノドーの
活動や業績を「公共の福利」「公共善」という理念から検討することによって、フランス国政史、
社会史上におけるルノドーの活動の意味や意義を再検討することである。最初に、ルノドーに関す
る近年の研究書の収集に努め、G・ジュベール、R・ドゥラヴォー、C・トーマなどの研究の読解と検
討にとりかかった。とくに、F・マゾーリックによるルノードーの「広宣局」の活動に関する博士論
文の刊行は、17世紀フランスの科学思想やアカデミー行政との関わりを包括的に検討した研究として
秀逸であるので、16世紀後半から17世紀前半にかけてのヨーロッパの思想、宗教、科学精神の風土か
ら、フランスさらにはルノドーの置かれた位置についてとくに考察を加えた。ルノドー関連の文献と
しては、フランス国立図書館、国立古文書館において、手稿資料の入手と資料調査を敢行した。この
中から、「公共の福利」に関するいくつかの発想や証言の痕跡をたどることができた。また、初期ル
ノドーについては、20代初期のイタリア旅行に見られるように、当時のイタリア思想・文化の影響が
強くみられるので、17世紀前半のイタリアについて検討するために、ローマの古文書館、博物館、美
術館等で、美術・文献等の現地調査を行った。これをとおして、17世紀イタリアのルネサンスを継承
した文化や文物がルノードーの活動に与えた影響について、いくつかの知見を得ることができた。さ
らに、とくに新聞の刊行に見られる情報・出版事業の展開と、公共の福利に見られる医療・社会福利
の理念がいかに結びついていったかの経緯について、足跡、活動、著作から仔細に検討をすすめてお
り、論文などの執筆準備をさまざまな角度から行った。