表題番号:2010A-010 日付:2011/04/11
研究課題マンション法の欧米・韓国・日本の比較研究―マンション法の国際学術研究拠点の形成のための基礎研究―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 鎌野 邦樹
研究成果概要
 本研究は、2010年秋に申請を予定していた日本学術振興会・アジア・アフリカ学術基盤形成事業、または同・科学研究費助成・基盤研究(B)の基礎作業として、第1に、わが国におけるマンション法の若手・中堅研究者を組織化してマンション法の比較法研究のネットワ-クを構築すること、第2に、比較研究の対象を欧米(ドイツ、フランス、アメリカ、イギリス等)だけではなく、韓国等のアジアにも拡大することとし、そのためには韓国の研究者との継続的な共同研究態勢を形成することを目的とした。2010年秋には予定どおり、科学研究費助成・基盤(B)に、「マンションの維持・改良・建替え及び管理に関する10カ国の比較法研究」との課題名にて申請をしたが、採用には至らなかった。しかし、本研究の目的のうち、第1の点に関しては、全国の研究機関に属する研究協力者8名の参加を得て期間中に5回の研究会を開催するなどし、第2の点に関しては、韓国・朝鮮大学のカン・ショクシン教授の参加を得て期間中に2回の研究会を開催し、また、インタ-ネットを利用した意見交換を行うなど、当初の本研究の目的を達成したと考えている。その証左として、第1の点に関しては、2011年2月に、法務省より、将来の立法の基礎とするために、本研究組織に属する7名を構成員とする「老朽化区分所有建物に関する外国法制検討会」の開催を依頼され、法務省立法担当者の参加のもとに2回の会合を実施した。第2の点に関しては、韓国法務省集合建物法改正委員会及び韓国民事法学会より、本研究成果(マンション法の比較研究)の報告を、2011年6月にソウル(法務省)および釜山(民事法学会)にて行う旨の依頼を研究代表者が受けた。本研究の成果は複数あるが(下記「研究成果発表」参照)、その最大のものは、マンションの建替え及び解消(一括売却による処分)に関する法制度については、各国各様の制度があり(例えば、建替え制度は日本と韓国にしか存在せず、また、両国でもその内容が異なる。ドイツやフランスでは解消制度はないが、イギリスやアメリカにはこれが存在する。ただ、その内容および実態は各国各様である。)、各国それぞれに課題を抱えているという点を明らかにしたことである。
 2011年度の科学研究費助成・基盤(B)が不採用に至った理由は必ずしも明らかではないが、考察の対象を広げすぎたために焦点がぼけたことや、研究組織が大きくなり過ぎたことなどが考えられる。これらの点を検討しつつ、本研究の成果を踏まえて、2011年秋には、再度、同申請を行いたいと考えている。