表題番号:2010A-004 日付:2012/04/02
研究課題公務員制度改革が中央地方の政府間人的リンケージにおよぼす影響に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 稲継 裕昭
研究成果概要
 本研究は,中央政府と地方政府の人的リンケージの実態を明らかにし,人的資源の充実が地方の自律性を高めうる重要な要素であることを主張したうえで、2007年以降急速に進みつつある公務員制度改革が、この政府間の人的リンケージにどのような影響を及ぼすのかを明らかにしようとするものである。
 研究代表者は,『人事・給与と地方自治』において、地方の側がイニシャティブをもって出向官僚を利用しており,中央省庁に対して影響力を行使する一手段と考えられるとの見解を示した。それを可能にしたのは,戦後の首長公選制の導入および地方での個別の人材採用が,地方での人的資源を充実させたという条件整備があったためであり,これは地方の自律性を高める上でも極めて重要であったとの見解を提示した。
 本研究においては,急速に進みつつある公務員制度改革が、中央地方の人的リンケージにどのような影響を及ぼしているのか、また、今後及ぼす可能性があるのかを探った。
 改革の影響、特に天下りをさせにくくなったことに伴い、各省庁とも幹部公務員の平均年齢が高齢化している。そこで各省の人事担当課は独立行政法人・公益法人への現役出向や、地方自治体への出向を増やすことによってこれを乗り切ろうとしている。
 2009年以降、総務省(旧自治)から県副知事への出向は50歳代前半が普通になってきている。従来、40歳代の半ばの官僚が経験するポストであったが、本省における役職不足、天下り原則禁止が大きな影響を及ぼしている。従来、本省課長級を県の副知事に出していたのが、現在では、本省審議官クラスを出している。
 出向官僚の出し方に大きな変化が見られる。これは、中央政府のデータからだけではなく、4県2市の職員と合宿研究会をした際に、各自治体側のデータの変遷からも明らかになった。
 このことは、地方の側の自律性を一層高めることになるのか、あるいは、その逆と考えられるのか、今後、検討を深めたい。