表題番号:2010A-002 日付:2011/02/16
研究課題協力ゲームの解の考察:公理的接近と非協力ゲームによる接近
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 助教 上條 良夫
研究成果概要
 本研究では、協力ゲームの様々な解を公理的に分析するにあたり、Kamijo and Kongo (2010, IJGT) により提案された一つの公理に注目する。この公理は、Shapley value を公理化する性質としてよく知られた Balanced Contributions Property (BC) の要求を弱めた、Balanced Cycle Contributions Property (BCC) という公理である。BCC は、BC の要求する社会に存在する任意の二人において成立するある種の衡平関係ないし緊張関係を、社会を構成する全員の間で成立するような緩やかな衡平関係として描きなおすものである。協力ゲームの解の理論において、BC の要求を BCC へと弱めることの一つの利点は、BCC により Shapley value 以外の解も公理化できる可能性があることである。実際、BC と効率性を満足する解が Shapley value だけであるのに対して、BCC と効率性を満足するような解は無数に存在している。BCC と効率性に追加的な公理を付け加えることにより、Shapley value 以外の様々な解が公理化できることが期待されるのである。

 本研究を通じて、上記のような予測が実際に成立することが確認された。つまり、BCC を用いることにより、CIS value、Egalitarian value, Solidarity value, Banzhaf value などの先行研究で提案されてきた解達を統一的に公理化することに成功したのである。さらに、加法性と対称性を満たすような解が必ず BCC を満たすという、BCC を満足するための十分条件も発見された。