表題番号:2010A-001 日付:2013/02/21
研究課題帰納的ゲーム理論における情報獲得行動が記憶形成に及ぼす影響の視線測定器による実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 船木 由喜彦
研究成果概要
 従来のゲーム理論では、ゲームの構造は既知と仮定されているが、現実には、我々は様々な試行により、情報を獲得し、構造を理解して、選択を行っている。そのような状況をフォーマルに分析する理論が帰納的ゲーム理論である。この理論における重要な要素は、個人の情報獲得プロセスを特定することである。帰納的ゲーム理論の実験では、個人の獲得し、記憶に蓄積した情報は明らかになったが、その学習プロセスはいまだ不明である。
 一方、視線測定機(アイトラッカー)は、実験参加者に負担を感じさせることなく、自然に視線や注視時間を測定することができる。本研究はその最新機器を用いて、帰納的ゲーム理論における被験者の情報獲得プロセスおよび学習プロセスに関して新たな知見を得るための研究である。
 研究期間中に、以前に行われた帰納的ゲーム理論実験を再現し、アイトラッカーを用いた再実験を行った。それにより様々な個人データを収集することができたが、それらのパターンの計量分析は困難であり、最終的な研究成果を得るまでには至っていない。個人の視線データは膨大な量のデータであり、その特性を見つけるためには、さまざまな要因、不確定要素も考慮しなければならず、試行錯誤的に分析を継続している。本研究は2010年度の助成研究であるが2011年度も継続して、データ収集とならびにその分析を試みる予定である。さらに、2011年度中にそれらの成果をまとめて公表する予定である。
 アイトラッカーによる実験の基礎となる理論および実験部分に関しては、報告が可能となったので、信州大学における実験ワークショップなどで紹介、報告を行った。さらに関連する研究論文の作成および発表が可能となったので、それらは、東京工業大学やクアラルンプルで行われた実験経済学に関する学会で発表を行った。また、帰納的ゲーム理論の研究自体も進展があり、現時点までの研究成果を論文としてまとめ、いくつかの大学のワークショップで報告を行った。