表題番号:2009B-368 日付:2013/05/16
研究課題業務に関する大規模知識再利用のためのパターン活用枠組みの実現
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 鷲崎 弘宣
(連携研究者) 理工学術院 教授 深澤 良彰
研究成果概要
本研究では、熟練者がソフトウェア開発を含む種々の業務におけるノウハウをパターンとして記述することを支援し、記述されたパターン文書をネットワーク上で管理する。さらに、これに対して、計算機を用いた文書処理技術の自動適用による体系化および検索を行い、熟練者の中で閉じていたノウハウをパターンとして明示的に再利用することを促すことを目的とした。業務ノウハウの再利用技術は、古くからその時代の文書処理/管理技術に応じて、個人の中に蓄積された暗黙知を形式知へと体系化/共有する種々の知識管理技術として提案されてきた。本研究はそれらの中で、暗黙知をパターンとして記述するという比較的最近の取り組みを促進するものと位置づけられる。パターンとして形式化された業務ノウハウを、文書処理技術の適用によって体系化/活用する試みは、我々によるソフトウェア開発領域におけるこれまでの試みを除いて世界に類を見ない。具体的には本研究においてパターン活用環境を、パターンの記述支援・収集部、HTML解析部、パターン形式判定部、パターン抽出部、パターン間関連解析部、および、パターン検索・再利用部より構成して実現した。得られたパターン活用環境によって、組織における知識の再利用を促進し、さらに、得られるパターン文書集合の自動解析と自動体系化によって、個々のパターンが扱う問題よりも巨大な問題を扱うことを可能とすることを確認した。これにより、個々の小規模/断片的な知識から、より大規模/体系だった知識を創造する効果が期待される。例えば、セキュリティの高いソフトウェアの分析、設計、実装において典型的な開発ノウハウがセキュリティパターン集合としてまとめられているが、パターン間の詳細な関係が不明瞭であり効率的かつ効果的な再利用を妨げていた。そこで、実現したパターン活用環境を用いることで、再利用におけるパターン間の依存関係や汎化・特化などの詳細関係を体系的に識別し、識別結果の参照により個々のパターンや集合の再利用を支援可能なことを確認した。