表題番号:2009B-367 日付:2010/02/19
研究課題ヒト自身の特性を用いた情報環境の高度利用システムに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松山 泰男
研究成果概要
この研究は,情報爆発の時代においてヒトの情動(affection)をどのように利用するのかという問題に関して,次のような具体的問題を設定して新たな方式の提供とそれを支える理論的手法を与えることを目的として開始した.
(1) ヒトに固有な感性としての画像の類似性を図る能力の機械的実現とそのツール化を図る.
(2) ヒトと情報機器(二足歩行ヒューマノイド)のそれぞれをネットワーク中のノードとして位置づけたときに,ヒトが発生させる信号により情報機器を操作する方法の開発を行う.
 以上の項目(1)においては,論文(LNCS No. 5506, pp. 620-627, 2009)にあるように,主成分基底および独立成分基底を用いて,人間の感性を反映できる類似画像検索システムを実現した.この方式は,JPEG方式あるいはJPEG2000方式よりも感性の反映度と検索速度の両面において優れている.
 また,項目(2)においては,ヒトの体の動き(ジェスチャ情報)に加えて,近赤外線スペクトル(NIRS)により非侵襲的に計測できる脳の酸化ヘモグロビン濃度と組織酸化率を用いて二足歩行ヒューマノイドを操作できる方法を確立した.このとき,隠れマルコフモデルとサポートベクターマシンをベイジアンネットワークに組み込む総合システムを提案し,これによりPCレベルでのリアルタイムシステム実現を可能にした.
 さらに,項目(2)においては,次のような新成果を得ることができた.
(a) NIRS装置を用いて思考のみを行った場合の脳活動を検出し,それにより二足歩行ヒューマノイドを操作することを可能にした.
(b) 非侵襲型の脳計測は,安全ではあるがやはりタスクの粒度に限界がある.そこで神経細胞のスパイク信号列(今回はサル)をEPSPに変換してそのパターンを認識し,その結果を二足歩行ヒューマノイドへのコマンドに変換してこれを動作させることに成功した.
 以上のように当初の目的を達成し,さらには(a)と(b)にあるように,初期予想を超える成果を上げることができた.