表題番号:2009B-346 日付:2010/03/09
研究課題センサーネットワークにおけるアプリケーション開発手法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) メディアネットワークセンター 助教 鄭 顕志
研究成果概要
 無線センサーネットワークにおけるアプリケーション開発では,ネットワークの詳細を隠蔽し,複数のノードで実行すべきマクロな振る舞いを記述可能とするDomain Specific Language(DSL)を用いた開発が主流となっている.しかし,現在は,抽象化の度合いが異なるDSLが乱立しており,記述したアプリケーションを他のDSLに移植するコストが増大している.そこで本研究では,モデル駆動開発に基づき,アプリケーションをDSL非依存のモデルで記述し,変換ルールによってDSL依存のモデルを自動生成する,開発プロセスを目指す.
 このようなモデル駆動開発では,DSL非依存のモデルを記述するモデリング言語と,各DSL依存のモデルに変換する変換ルールが必要となる.しかし,DSL非依存モデルのモデリング言語を設計する場合,その記述の抽象度が課題となる.既存のDSLは,計測したいデータに関する性質のみを宣言的に記述するDSLや,分散ネットワーク上での分散計測処理を手続き的に記述するDSLなど,DSL上で記述される抽象度が異なる.DSL非依存のモデルの抽象度をある抽象度にあわせた場合,他の抽象度で記述するDSLに変換する場合,記述の抜け漏れ・重複が生じてしまい,開発工数の増加,保守性の低下などを招いてしまう.
 そこで本研究では,DSLを抽象度毎のカテゴリに分け,各カテゴリの抽象度に合わせたDSL非依存モデリング言語と,抽象度毎の非依存モデル間を変換する変換ルールを提案した.抽象度に基づいたカテゴリに応じて非依存モデルを記述することで,複数のセンサーネットワークに移植する際に生じる冗長な作業工程を排除し,開発工数低減,保守性の向上することができる.
 本研究では,提案した開発手法に基づき,火災検知アプリケーションを抽象度の異なる2つのDSLに移植する事例で開発工数に関する評価を行い,従来の開発手法と比較し,開発工数を低減できることを確認した.