表題番号:2009B-331 日付:2010/04/02
研究課題ハイブリッドな学習コミュニティーにおける協働的な学び
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 舘岡 洋子
研究成果概要
 多様な背景をもつ学習者たちが、相互に関係性を持ちながら協働的に学んでいる教室は、「学習コミュニティー」ととらえることができる。ハイブリッドな構成員からなる学習コミュニティーでは、コミュニティー全体としての「集合的学び」と構成員個々の学びとが同時に成り立っていると予想される。ハイブリッドな学習コミュニティーのもつ創造の力(創発)の実態とその生成要因を明らかにすることが研究課題であった。
 具体的には、協働的な学習活動によりなりたっている留学生たちの日本語の授業を参与観察した。観察からは、学習者たちは互いの重なりを意識する中で異なりに気づくことができ、それぞれの価値観を主張し、授業という場はその価値のせめぎあいの場であること、そのせめぎあいの中から創発が起きうることがわかった。
 創発が起きうるデザインとしては、ひとり一人が主体的に場に参加できるような場のデザインが求められる。したがって、教師が与えるのではなく、学習者もともに参加し授業を創ることが必要になる。
 また、このような授業への参加には、コミュニティー構成員たちの授業観・学習観の違いが重要な影響を与えていることがわかった。つまり、授業でめざされているものが、学習者自らの学習観と異なる場合には積極的に参加することができない場合がある。そこで、研究期間後半には中国において日本語授業の観察をするなど、学習者の学習背景の調査も行った。学習者の学習観はそれぞれの学習経験と大きく関係しているが、新たな経験をもつことによって過去の学習観がなくなるのではなく、過去の経験と併存した形で新たな学習観が共存するのではないかと考えられるが、今後、さらに調査が必要である。