表題番号:2009B-310 日付:2010/03/28
研究課題スポーツ動作時の骨盤・胸郭挙動解析 ―腰椎分離症の予防対策考案に向けてー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 金岡 恒治
研究成果概要
スポーツ動作時に生じる体幹不安定性が腰椎分離症や椎間板障害を引き起こす一因であると考えられている。本研究では代表的な体幹回旋運動である、野球のバッティング動作、テニスのサービス動作、バドミントンのラケットスイング動作中の体幹筋群の活動を解析し、これらの動作時に体幹安定性を得るために必要とされている筋活動様式を明らかにする。
【方法】健常人男性7名(年齢22.4±1.5歳)を被験者とした。被験筋は両側の腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋、腹横筋、多裂筋とし、表層筋である腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋は表面電極、体幹深部筋である腹横筋、多裂筋はワイヤー電極を用いて筋活動計測を行った。まず各被験筋の最大随意収縮(MVC)を測定した後、バッティング動作、テニスサービス動作、バドミントンラケットスイング動作を行わせ、その際の各筋の筋活動を解析した。またバッティングの際には重量の異なる4種類のバットで素振りを行わせた。
【結果】右打ちのバッティング、右利きのテニスサービス、右利きのバドミントンフォアハンドスイングのいずれにおいても動作時には左の腹横筋の筋活動が増した。またバットの重量の違いによって体幹深部筋の筋活動には有意な変化を認めなかった。
【考察】体幹を左回旋させる運動を行う際には左腹横筋の活動量増加を認めた。上肢を体幹から離れた位置で運動させる際に体幹には大きな回旋モーメントが発生する。その外力に対抗し体幹を安定させるために左腹横筋の活動を必要としたと考える。またバットの重量を変化させても深部筋活動に影響が出なかったことから、より重いバットを用いた際に増加した外力は腰椎への負荷として作用することが疑われ、これが腰椎分離症などの腰部障害の一因であることが示唆された。