表題番号:2009B-309 日付:2010/02/23
研究課題野球の投球ボールの回転と手指動作の精密測定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 彼末 一之
研究成果概要
野球の投手が投ずるボールの動きはボールリリース直前の腕,手,指の動きによって決まる.特に指の動きは重要だが,この時点での指の動きは高速で,通常のビデオ映像では細かい動きはとらえられない.そのためピッチングの指の動きに関する研究はこれまでほとんどない.そこで,申請者は高速ビデオを3台用いて手・指の動きをmm, msecの精度で測定するシステムを開発した.これを用いて投手のコントロールの良し悪しと腕・手・指の動きの関係を解析するのが本研究の目的である.【方法】大学野球投手3名の手背部10点にマーカーを貼付し,正規のマウンドから30球投球させた.捕手捕球動作をビデオカメラで撮影し,捕球位置の垂直成分,水平成分を算出した.ボール及び手・指の動きを3台のビデオカメラ(1000Hz)で撮影し,ボールの軌道,指の関節角度及び手部の空間における角度を算出した.3次元座標系は投手板中央2塁側を原点とし,1塁方向をY軸,捕手方向をX軸,垂直上方をZ軸として構築した.【結果】捕球位置垂直成分はXZ平面に,水平成分はXY平面に投影したボール投射角度と強く相関した(p<0.001).またボール投射角度XZ成分はBR時のXZ平面における手の倒れ角度と相関した(p<0.01).示指,中指の各関節の最大伸展角度と捕手捕球位置の間には相関関係が無かった.【結論】ボールコントロールにはBR時の手部倒れ角度が重要な要因であることが示唆された.投球のパフォーマンスの実体が明らかになれば,それを具体的に実現するためのトレーニング法,投法の開発に結びつくであろう.とくに手,指の動作を知ることはパフォーマンスと体の動きのインターフェースを知ることである.たとえ手・指の動きを直接調節することは難しくとも(実際この動作フェイズは高速であるために,ほとんど意識できない)その動きが明らかになれば,それを実現するための腕,体の動きを意識することは出来,結果的に科学的なトレーニング法開発につながるであろう.